風変わりなシュガー


「そりゃ勿論泳ぎにいったんですよ!」

「泳いだわけ?」

「・・・浮かんでましたよ、海に」

「泳いでないでしょ。それに、汗かいたら日焼け止めなんて流れるってわかってるでしょうに」

 判ってましたけどー!私は更に頬を膨らませながら言った。

 それから、市川さんが作った素敵なサンドイッチプレートと紅茶をお盆にのせて、テラス席で朝食を待つご夫婦の所へと運ぶ。

 ちょっと離れたところにある別荘地に住むリタイヤ組の年配夫婦で、ここの常連さんだ。平日は毎日ドライブがてら「ライター」に寄って朝食を食べ、そのまま街へと買い物に出かけていく。羨ましい悠々自適生活ではあるが、きっとこの人たちも様々な苦労を乗り越えてきたのだろうって今の私は考えてしまう。

 人生の暗い淵は、誰にだってあるはずだ。

「お待たせしました」

 笑顔を顔に貼り付けてガラス戸をあけると、二人はあらまあと言った。

「メグちゃん、凄い日焼けじゃないの!」

「そりゃあ痛いだろう」

 やっぱり誰が見ても真っ赤らしい。

「痛みには何とか耐えてます~」

 お愛想を手と共にふって店の中へと戻り、お盆を置いて市川さんの前でため息をつく。

「あーあ・・・私、昨日どうして浜辺に行ったんだろ」

 彼はパッと手を振って、私のため息を散らした。

「ダメダメ、ため息禁止。不幸が蔓延する!それに、さっき自分で泳ぎにいったって言ってただろ」

「そのつもりでしたよー」

「じゃあ何で泳がなかったの」


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