風変わりなシュガー
自動販売機の後ろ側には海へくる人達用の駐車場が広がっている。防風林が少しだけあって、そのあとは広大な駐車場。まばらに止まっている車。それから駐車料金を徴収する小屋。自動販売機とその小屋に挟まれた場所に数個のパイプ椅子が置いてあって、そこに、カップルがいた。
椅子に座った男の膝に女が跨り、今まさに濃厚な抱擁とキスを交わしているところだった。男の両手が女の顔を挟み込んで、角度を変えて唇を貪りあっている。
――――――――あら。
私はパッと体を戻した。自動販売機を間に挟んで、あちら側では男女がいちゃついていたのだ。耳に飛び込んできた音は、口付けによるリップ音だったってことで・・・。
・・・うわあ~、もう止めてよ~!
自分が赤面したのがわかった。
経験がないわけではないが、人様のラブシーンをマジマジとみたことなどない。そりゃあ恥かしいでしょう!
身の置き所がなくて、気まずさに顔を歪める。だけど当初の目的を果たさずに離れるのは悔しかったから、マッハで小銭を取り出してお茶のボタンを連打した。
ガコン!
商品が落ちた音で、カップルも人がいるのに気がついたらしい。やだ、誰かいるよ、そう女の小声が聞こえて、ガタガタと椅子が揺れる音もする。やだって・・・そりゃこっちのセリフでしょうが、何でこんなところでいちゃついてるのよあなた達!ついそう心の中で突っ込んだ。
じゃあまた今夜。そんな声と走り去る音。