風変わりなシュガー
「教えちゃった、とか?メグっちのこと?それにもしかして、この店とか?」
私はテーブルの上に頬をつけて、全身で申し訳なさを表現する。
「・・・すみません、言ってしまいました、ここにいることを」
「あらあ~」
目の前で、市川さんが情けない顔をする。
「お客さんが増えるのは店としては有難いけれど、よく知らない人に居場所を知られるのはあんまり感心できることじゃないよ、メグちゃん」
「ううう、判ってます~!」
私だって負けてないぞの情けない顔で、仕方ないからひたすら謝った。だってだってしつこかったんだもん!何かの情報を教えない限りついてまわるぞ的な勢いを感じたのだもん!
「まあ、あの、ざっとではありますけど。でも国道でトンネル出たところでって言ったらすぐに判ったみたいでした」
「そりゃこの辺りで店ってここしかないからねえ。地元の人も来てくれてるし、話くらいは聞いたことがあるんだろう」
市川さんは少しの間真面目な顔で闇に目をやって考え事をしていたようだったけれど、その内に振り向いてにかっと笑う。
「ま、言っちゃったものは仕方ないよな。メグっちの男がきたら教えてくれ。俺も観察しときたいし」
「わわわ私の男じゃありませんよっ!あんなシュガー男!ちゃらちゃらして、ほんとに!」
「だって自分で情報公開したんでしょうが」
ああ、ビール瓶で自分の頭を殴りたい。半日前にしてしまった自分の行為を思い出して、私はむすっと顔をしかめる。