風変わりなシュガー
舌に溶け込む甘い、ザラリとした感触。・・・あれが私には必要なのに。だけど強い意志でもって、雇い主が隠してしまったから、もう仕方がない。自分のソファーへと引き返してからこっそりと口に含もうって思っていた。
シュガーホリックメグ。彼氏がそう言って、顔を顰めていたことも思い出した。ホリック・・・依存症。本当にそうだから、過去に向かっても文句が言えない。
「それで市川さんは?今日は何してたんですか?」
舐めることの出来ない砂糖と昔の嫌な思い出から意識をそらそうと、あんまり興味はなかったけれども質問をしてみる。普段、休みの日に何をしているのか市川さんは言わない。多分店の掃除だとか仕入れだとか菜園の世話だとかだろうって思っていたから、私からも特に聞いたことはなかったのだ。
ここにお世話になりだした時から、休日には私は必ず外出していた。田舎への好奇心や物珍しさ、それから足りない日用品を買うために、とにかく休日には家や店にいなかった。だから主である市川さんが何をしているのかは全然知らなかった。よく考えてみれば二人の間で話題になったことすらない。
平日よりは遅めに起きてくる。そして、私の用意した朝食を食べて、それから――――――?
市川さんは集めたスティックシュガーをビニール袋に突っ込みながら、ちらりと私を見る。それから薄く笑って、ゆっくりと言った。
「それは秘密」
え、どうして?
ちょっと首を傾げた。店の掃除や菜園の世話なら、何も隠す必要はないでしょうに。
だけど市川さんはもう一度にやりと笑うと、風呂入るな~と言ってウッドデッキを去ってしまった。残された私はダラダラとテーブルに頬をつきながら、ぼんやりと考える。
・・・うーん。本当に、謎の人だわ。