風変わりなシュガー


 喫茶店「ライター」の朝は早くはない。

 少なくとも、都会にいる間に私がバイトをしていた飲食店に比べたら、早くはない。開店は朝の8時半で、最初のお客さんがくるのはほぼ10時前。近所(といっても結構遠い)の別荘地からパラパラと何人かが来る程度で、旅行中に立ち寄るライダー達も午前中にくることは滅多にないのだ。だからオープンは別に9時でもいいんだけどな、と言いながら、やっぱり彼は8時半には店を開けていた。

 オープンが8時半、だけど、市川さんの朝は早い。

 休日以外の毎日、彼は朝の5時には起きている。

 住居兼店の2階に上がる階段、その階段を上がって広いホールの隅っこに置かれたソファーベッドを私に貸してくれていて、1室しかない8畳間で市川さんが寝起きしている。私が借りるようになった階段ホールの隅っこは、市川さんが簡易のカーテンをつけて仕切ってくれたので一応目隠しはある。だけど市川さんが起きてドアを閉める時、やはりその音で起きてしまうから知っていた。

 最初はびっくりしたものだ。

 えらく早いな!と思って。まだ5時だよ、一体何するの!?

 で、居候である私も起きなきゃならないのかと思って慌てたものだった。その時は店のカウンターの中でお湯を沸かしながらの市川さんが、「俺にあわせて起きる必要はないよ」と言ってくれたのですぐにまたソファーベッドへ戻ったのではあるが。

 今朝もまた、早くに音がした。

 眠りがあまり深くない私は簡単に目が覚めてしまう。枕元の腕時計を引っ張って、片目だけ開けて時間を確認した。

 ・・・5時10分。おはよーございます・・・。今日もえらくお早いんですねえ~・・・。



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