風変わりなシュガー
隣の友達がタバコを口にくわえながら笑う。
「コイツこんな田舎であんなデカいのに乗ってるから、大変なんすよ」
「大変?目立つのが?」
市川さんがチキンサンドを手早く作りながら聞く。ライダー達に慣れているからか、突如現れた地元の若者にも全く動じてないようだった。私は何となく一歩ずつ後ろに下がりながら会話を聞いていた。
「違う違う。ほら、田舎なんで、道幅が狭いの!なのにあんなデカいから、皆迷惑してんです」
「迷惑言うな!オレはちゃんと挨拶してるぞ」
「そう、あれに乗ってる限り、常に手はあげっぱなしだな」
店内に笑い声が響いた。その中には市川さんの声も混じっていて、男にしかわからない会話とやらが楽しかったらしい。
「ネットで買うの?ここらにはアメ車の販売店ないでしょう」
市川さんがカウンターからサラダとサンドイッチを出しながら聞く。シュガーが首を振った。
「貰ったんだ。しがない漁師の持ち金じゃいくらボロくてもあんなの買えない」
「え、漁師?誰が?」
つい、言葉を挟んでしまった。
カウンターの客二人と店主が一斉にこっちを見たから、私はハッとして口を閉じる。・・・ああ、やばいやばい。折角目立たないようにしていたのに!だってあまりにも驚いたから!
シュガーの隣に座った友達が、ニヤニヤしながら頷いた。
「判るよ、見えないんだろ、シュガーが漁師って。因みにオレも漁師ですよ。ここらのは皆幼馴染だけど、他所から来た人は大体仕事内容聞いたらビックリするもんな」