風変わりなシュガー
「ここらじゃ他に仕事なんてないんだよ。代々の漁師、それが男の仕事。役所に入れるほど頭がよくないし、都会に行きたいとも思わないしってなりゃあ親の仕事をつぐしかない」
ペラペラと友達が喋った。私は無意識で頷く。そうなんだろうって思ったのだ。ここら辺では、それが一般的な人生の進み方なのだろうって。
私が育った場所とは違う。物事の当たり前も、人生も。通りを歩く人影はほとんどなく、真夏の路地裏を太陽だけが存在して焼いている感じ。そんな静かで人気のない田舎の海辺なのだ。
それにしても、とその友達が私をじろじろと見だす。
・・・な、何よ。そのあけすけな視線にたじろいで、私は思わずふきんを握り締めた。
「シュガーがえらく遠くの茶店行こうっていうから着いてきたら、理由が他所から来た女の子だとはねー。おねーさんイントネーションが違うし控えめだよね、どこから来たの?」
仲良くする気はなかったから、私はぶすっとして答える。
「・・・東の方です」
「なんじゃそりゃ」
友達が呆れた顔をした。その隣でコーラを飲みながら、シュガーがゲラゲラと笑っている。
「東のどこ?」
「教えません。名前も教えません」
口をへの字にして答える私に更に呆れた視線を投げたあと、シュガー男の友達はにやりと笑う。
「名前は何となくわかるけど。めぐみとかそんなのでしょ?さっき店長さんがメグちゃんって呼んでたし」
あう。
ちらりと市川さんを見ると肩をすくめている。