風変わりなシュガー
「ダメなんだよ、この砂糖の人には何言っても言葉が通じないの。オレが言うのもなんだけど、ちょっと変わってるよな。海にも一人で来て泳ぐでもなし浮かんでるだけ。何話しかけてもちっとも喋らないし」
「あ、海で会ったんだ?それでお前の浮き輪の空気いれを知ってるのか!」
「そう。別の日も莉子としけこんでたら会ってさ」
本人を目の前にして二人でベラベラと喋っている。市川さんは苦笑しつつも彼らを観察しているようだったし、私は身の置き所がなくて居た堪れなかった。
莉子っていうのは、きっとあの時イチャイチャしていた女の子なのだろう。
友達がにやっと笑った。
「お前今度は莉子に手え出したの?親父さんにバレねーようにしろよ。海に沈められっぞ。豊饒丸に穴を開けるくらいのこと、あの人なら有り得るぞ」
「だいじょーぶ。舌いれただけだよ。何も妊娠させたわけじゃないし」
露骨な会話だ。言ってることの意味が判ってしまって更に居心地悪くなったけれど、どうやらあの女の子のお父さんは厳しい人らしいと判った。・・・バレてしまえ。そして天罰を受けたらいいのだ!豊饒丸というのがこの男の船なのだろうから、何なら解体してもらえ。
シュガーが体を完全に横へとむけて言う。
「お前はよく結婚なんてしたよなー、ほんとびっくりだわ。結婚って気持ちいいのか?」
「気持ちいいって何だよそりゃ。オレはいいんだよ、ほっとけ。それよりシュガー、お前はそろそろ落ち着けって思うぞ。ね、おねーさん」
友達が、急にくるりと私を向いてにっこりと笑った。