風変わりなシュガー


「やりたいことだけやるんだよ。オレは今はそれでハッピーだね~。友達は多い、恋人はいない。海が好きだし、漁はたまに苦痛だけどそれはそれでアリだと思ってる。砂糖の人はオレとは違うだろうな。海にきて、あんな面白くなさげな顔して浮いてるのはこの人くらいだよ」

 シュガーがそういうと、そういえばと友達が聞いた。

「さっきから何でおねーさんのこと砂糖の人って呼んで――――――――」

 その時、店の入口のドアベルが鳴った。

 ハッとして振り返って、私は叫ぶ。

「いらっしゃいませ!」

 新しいお客様だ!そういえば、シュガー達ばかりに注目していたけれど駐車場には大きなバイクが数台停まっている。ツーリングの途中の客らしい。私は慌ててふきんをカウンターに戻し、そこで気がついた。

 市川さんの声が聞こえなかったってことを。

 いつもなら、私のいらっしゃいませ、のあとに続く声が―――――――

 わらわらと5人のライダー達が店に入ってきて、ほどほどに冷やされた空気に歓声を上げている。その集団の真ん中に立つ男性を見詰めて、市川さんが微かに笑っていた。

 ライダー達が席につく中、一人だけが立ったままでこちらを見ている。短い黒髪に中肉中背、見えている上半身はあまり日焼けしていない。愛嬌のある、可愛らしい顔だ。ライダースーツを腰元まで脱いで立つその人が、片手にヘルメットを抱えたままでひょいと片手を上げた。

「よお、久しぶり」


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