風変わりなシュガー


 座り込んで、右にお茶のペットボトル、左に黒砂糖が入ったタッパーを置いていた。

 あまりに白砂糖を舐める私に業を煮やした市川さんが、ある日黒砂糖の入った袋を押し付けたのだ。

「白く精製されているものは体を冷やすから!せめてこれにしときなさい」

 って。

 というわけで、私は沖縄の黒砂糖の塊を砕いてタッパーにいれ、それを齧っているのだった。

 今日も空は晴れていて、今現在も目の前で本日最後の太陽が燃えていく。肌がちりちりと音をたてるような強烈なオレンジ。風が通るたびに目の前にかかる髪を払って、黒砂糖を齧る。

 口の中に広がる甘さにううーっと唸りたくなる。

 この時間が、幸せを感じる――――――――・・・

「まーた食ってるよ。本当ナンなの、それ?」

 遠くの方から声がして、サンダルが防波堤の上を擦る音がした。

 出た、シュガー男。

 私はちらりと後ろを振り返って手早くタッパーを鞄に仕舞って立ち上がると、臨戦態勢を取った。

「お?どうしたどうした?何だそのファイティングポーズは!」

「この前いきなり近づいてきて海に落としたくせに!」

 私は唸り声つきで威嚇する。

 そうなのだ。この間、久しぶりにここへと来て、海水浴シーズンの終わりをしみじみとかみ締めながら突っ立っていた私に近づいたこの男は、いきなり後ろから私の体を押したのだ。

 ドン!って!


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