風変わりなシュガー
ついに隣に来てしまったシュガーが、眩しそうに手の平を額にかざす。
「ああ、明日も晴れるなー」
私は慎重にヤツの背後にまわり、海に落とされないようにする。シュガーの細身だけど大きな体は夕日で逆光になっていて、服や髪が風ではためいている。
「ねえ」
無意識に、話しかけていた。
声を出してからそれに気がついた。
シュガーが振り返って、あ?と返す。
だからもう仕方ない。私は一度言葉を切って、それからまた話し出した。
「何でシュガーなの?変わったあだ名だよね、それ」
絶対年上だとは判っているけれど、もう敬語なんて使ってやらん。こいつは変な男なのだから。
眉毛を上げて私を見たけれど、シュガーはすぐに返答をする。
「うーん、ほら、食べると甘いんだよオレ」
「は?」
「舐めると甘いから、シュガーなんだな!」
「・・・へーえ。男同士でも舐めあったりするんだ、へえええ~」
私は思いっきり下品な含み笑いをした。眉間に皺を寄せてシュガーが口を尖らせる。
「何で男なんだよ!女だろ女!」
「だってあだ名って男の人からも呼ばれてるんでしょ。だったらあなたは男の人ともイチャイチャしてるってことになる。それも幼少時から」
シュガーが唸った。
「・・・じゃなくて。くそ。オレの肌、ほら、夏は大変なんだよ。ベリべりになって」
「肌?」
そうそう、そう頷きながら、シュガーはよく焼けた腕をさして見せる。