風変わりなシュガー


「うーん、まあ、何となくはわかる。あの子は凄く生き生きとしているもんね。後悔なんて文字は知らねえって感じで」

「そうですよね。・・・何だかモヤモヤして・・・。会わないほうがいいんですかね。まあ私から会いにいってるわけではないんですけどー」

 市川さんは考えるような顔でビールを飲んだ。

「今まで周囲にいないタイプの人間なんだろうな。それって・・・貴重じゃないかな。滅多にいないタイプの人間と話す機会というのは」

「ふうむ、なるほど」

「成長に繋がるかもよ」

「ううむ」

 そういうものかな。私は再びカウンターに腕をついて寝そべり、ため息をついた。

「メグちゃんは、この春からずっと不安定だっただろ、情緒がね」

 市川さんが優しい声で言う。

「あの子、シュガーの彼はとても安定した精神の持ち主だと思うんだよ。ぶれない。自分に正直って点で」

 私はカウンターに顔をつけたまま、じっと聞いていた。市川さんが何を言うのかがわからなくて。

「何をチャンスだと思うかは人によって違うよね。でも俺はこう思うよ。彼に会えたのは、メグちゃんにとってチャンスだって。あの子の考え方や物の見方を、言い方はよくないけれど盗んでみるのがいいと思う。今まで周囲に居なかった人間で興味深い相手なら、じっくりと観察してみりゃいいんだよ」

 ・・・観察。シュガーに会ったのは、私にとってチャンス?

 あのあっけらかんとした態度や陽気な性格を、真似するべき?

 そうしたら私は灰色で底なしの自己嫌悪から抜け出せる?



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