風変わりなシュガー


 煮つまりまくってドロドロに溶けた就職活動を経て、何十社も受けて見事に全部失敗し、大学を卒業してしまったこの春。

 私はしばらく、途方に暮れてぽかんとしていたのだ。

 やることがなかった。

 学生の間にしていたいくつかのアルバイトは卒業と同時に辞めてしまっていたし、信じられないことに受け入れてくれる会社が一つもなかった。ひとつくらいは見付かるだろうって思っていたけれど。まさかの全敗だったのだ。

 それなりにアルバイトもしてきた。面接だって落ちたことはあったけれど、無事に仕事を手に入れて先輩達に可愛がられていたと自信を持てるバイト先だってあった。普通だ。いたって普通の大学生だったはずだ。人よりも秀でているところはないのかもしれないけれど、卑屈になるくらいに出来ないことだってない、そんな人間。

 なのに、私はどこの会社にも入ることが出来なかったのだ。

 あなたは当社には必要ありません、それが柔らかい言葉で書いてあるペラペラの紙が机の上に溜まっていった。

 それは最初のうちはじんわりと、それから急に凄い速さで私に襲い掛かり、強烈なショックを残した。誰からも必要とされていないのか、そんな風に思ってしまうのだ。私は、必要ないんだって。

 不安定になった私はそこで、彼氏に依存してしまった。優しい言葉をかけていつでも励まし、慰めてくれた彼氏に。私を必要としてくれるよね?って頻繁に電話をかけ、いつでも一緒に居たがったのだ。同棲を提案して、何とか自分の居場所を見つけようとしていた。

 ところが、やはり存在全部をかけてのりかかってくる女は同じように若い男性には非常な重荷だったのだろう。

『メグは暗くて、申し訳ないけど俺はもう付き合えない。以前の君に戻るまで、会わない方がいいと思う』

 そんな言葉を残して彼は去って行った。

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