風変わりなシュガー


「はひゃ・・?」

 変な返答になったのは判っていたけれど、もう舌が回らない状態だったのだ。私は市川さんが言った爆弾発言の意味をやたらとゆっくり考えて、長い間頭の中で咀嚼していた。

 ぼーっとしたままの私を見て、テーブルに頬をひっつけたままで市川さんがまた大声で笑う。

「メグちゃん酔ってるね~!!判ってないだろ、俺が言ったの」

 あはははは!市川さんの声が店内に木霊する。

 え、え?何か今って笑うところ?そんな話題だったっけ?確か、確か今、市川さんは――――――――

 私はぐるぐる回る頭の中で、ようやくその言葉に行きついた。

 子供がいたんだよね。・・・・子供、が・・・・。え。えええーっ!?

「えええええ~っ!??い、い、市川さん、何ておっしゃいました今!?こここここ子供、子供っ!?子供ってあの子供!?マジですか?」

「へーいDJメグ!舌がまわってないぞ~」

 ゲラゲラとまた笑っている。

 酔っ払いの市川さんがグラスを取ろうとして、手を滑らせた。バランスを失ったグラスは底を軸にしてくるりと回転し、そのまま止める間もなくカウンターから落ちてしまう。

 ガッシャーン。その冷たい音で、私は一瞬ハッとした。

「・・・ああ、やばい。割っちゃったよ勿体ない」

 市川さんが手の平で髪の毛をぐちゃぐちゃとかき回して、情けない顔をした。彼の天然パーマの髪は今ではすっかり乾いていて、更にふわふわになってしまっている。


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