風変わりなシュガー


 私はまだ驚きの中にいて、ただじっと床の上の割れたグラスを見詰めている。拾わなきゃ、と思うけど体が動かなかった。市川さんも同じようだった。椅子を降りて屈もうとしてよろめき、仕方ないとため息をついて、カウンターにもたれかかったままの体勢で靴でガラス破片を集めている。

 そのままで口を開いた。

「俺が休みの日に、何してるのかって前に聞いただろ」

「は・・・?えっと、あー・・・はい」

 酔いが邪魔して話が頭に入ってこない。市川さんはいつもと違う。それから、どうやら謎がとけるらしいってわかっていた。

 私はジンを瓶ごととって自分の頬にひっつける。少しでも冷やそうと思ったのだ。そして、ちゃんと話を聞こうって。

 ちゃりんちゃりんとガラスが床を擦れる音がする。片足で破片を集めながら、ぼーっとした顔で市川さんが話した。

「詐欺にあった人達のね、救済事業をやってるんだよ、実はね・・・。それで店が休みの日に、電話とかパソコンで仕事をしてるんだ」

 詐欺?・・・の、救済事業?それってつまり、ナンだ?

「・・・別にお仕事してらっしゃったんですか」

 私は小声でそういう。床のガラス破片から目を上げて、市川さんがにやりと笑った。

「野菜を作って店をやってるけど、独身とはいえそれだけではやっぱり生活出来ないんだよ、メグちゃん。完全な自給自足じゃないし、そもそもここは客も少ないから売り上げもないしね。維持費だって馬鹿にならない」

「はあ」


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