風変わりなシュガー
「元々は京都でボランティアでやっている人達の手伝いをしてたんだけど、何人かで会社を作ってね。俺もその一人になってるんだ。本業は喫茶店だけど、副業みたいな感じで、色んな詐欺にあった人の手助けをしている」
「はあ」
自分でも間が抜けていると思ったけど、そんな返事しか出てこなかった。話がどこへいくのかが判らなくて、とにかく自分の頭を冷やすことに一生懸命だったのだ。きっと私の眉間には皺がよっているはず。
「ちょっと話ずれるけど、メグちゃんは詐欺にひっかかりやすいタイプだから気をつけな。今は特に情緒不安定だし、初歩的な嘘にでも騙されそうだよ。それに根が真面目で人の言葉をすぐに信用するでしょ、そこ、心配」
「へ?ああ、はい、気をつけます・・・」
「自分の選択に自信がなかったら必ず周囲の人間に相談すること。そして、周囲の意見に耳をかすことだよ。覚えておいてね、約束できる?」
「は―――――はい」
酔っ払っていて自信はなかったけれど、小指を差し出されたから指きりげんまんをした。満足したらしい市川さんは、よし、と頷いてから、また片足でガラス片を集めだす。
「――――――で、その活動中にね、ある女の子に会ったんだ。まだ京都にいてボランティアでやっていた時だったけど」
市川さんが大きく息を吸い込んで、時間をかけて吐ききる。表情が一気に暗くなっていた。
さっきまでの陽気な酔っ払いがどこかへと消えて、目の前には巨大な影を背負った男がいる。私は思わずそんなことを思って、無意識にカウンターに掴まった。私は若干怯えていたのかもしれない。