風変わりなシュガー
『だってそこで何やることがあるんだよ~!浜辺に飲みに来ないか?花火やろうぜ花火!』
「結構です」
『ちっ!あんたは本当に可愛くねーぜ!そこはハイ喜んで、だろ!?もういいから店長に代わってよ、店長~!』
耳元で叫ばれて、私は仰け反った。それから顔をしかめっつらにしたままで受話器を市川さんに突っ返す。肩をすくめて受け取った市川さんが、はいはいと電話に出た。
何なのだ、あの男は!なんてマイペースなのだ!全く羨ましい限りだわ―――――――――
「うーん・・・君一人だけ?他に友達はいないんだね?本当に?・・・そうだなー、今から4時までにしてくれる?帰れなかったら困るし、こっちも迎えにいけないからさ。・・・そう、花火はなしで。はーい、じゃあ、行かせます」
え!?っと私は大声を出す。何だって!?行かせますって、一体誰を―――――――
腕を伸ばして受話器を戻し、市川さんがニコニコと笑った。
「行ってきなよ、メグちゃん。昨日俺が言ったこと、忘れちゃった?あの子と出会えたのは何かの縁なんだよ、吸収しといで、彼のいいところをさ」
「え~っ!!?私、行くんですか、浜辺まで?今から?行かなきゃダメなんですか~っ!?」
「そう、行くんだ。ついでに街で醤油買ってきてよ。もう切れそうだからさ」
それは嘘だって知っていた。だってストック管理は私もしているもの。
だけど市川さんの善良そうな笑顔を見ていると、もう仕方ないと思ってきた。だって雇い主が行けって言ってるんだし・・・・気はすすまないけど。もう、くそ。