風変わりなシュガー
「・・・行ってきます」
「うん。4時過ぎたら帰ってきなさい。あの子にもそう言っておいたから。夜はダメだよってね。そしたらあの子なんて言ったと思う?うわー保護者だ!だってさ」
ケラケラと軽やかに笑って、市川さんは外を指差した。
さっさと行けってことらしい・・・。
何てこったい!私に話してもらちがあかないから、雇い主に頼むとは!あの男・・・案外頭が働くのかも。
私はため息をついて、エプロンを外す。ルームシューズからスニーカーへと穿き替えて、膨れっ面のままで、外へと出て行った。
店を出たのは2時前だった。
私はまた強烈な日差しの中、チャーリーに跨って麓の街までを降りていく。国道を走りながら目の前に広がる海は今日も機嫌よくキラキラと輝いて、まだまだ夏ですよーって言ってるかのようだった。
汗を垂らしながら浜辺まで行く。
駐車場に自転車を止めて、背負ってきたリュックからタオルを出して汗を拭った。
・・・さて、問題のシュガー野郎はどこにいるのか・・・。
夏の初めにシュガーが女の子とイチャイチャしていた自販機の裏を通り抜け、砂浜へと歩いていく。
誰もいない砂浜は小さく見えて、あんまりに眩しいので侵入を拒絶されているかのようだった。
目の上に手の平をつけて影を作り、シュガーの姿を探す。人を呼んでおいていないとか、ナシでしょ。ほんとどこにいるの―――――――――あ。
「見つけた」
つい、声が出た。
最初の頃に私が浮き輪に浮かんで甲羅干しをし、酷い日焼けをしてしまったあたりの水際に、誰か寝転んでいる。