風変わりなシュガー


 ・・・あれだろうなあ~・・・他に人はいないし。

 仕方なく、そっちへ向かって歩き出した。何かの用があるとは思えないが、一応来たことだけでも伝えないと、と考えたからだ。

 ザクザクと音をたてて、水際に寝転んでいる男の方へと近づいていく。問題のその人物は、帽子を顔の上にのっけて寝ているようだった。

 いくら何でも暑いでしょ。ほんとこの人、馬鹿なのかもしれない。

 ゆっくりと近づく。その足音には気がついたらしい。寝ていた男の人が、片手でひょいと帽子を上げた。

「よーお、来たな!」

 シュガーが、帽子の影でにっこりと笑った。

 この笑顔を見ると――――――――確かに、怒る気はなくしちゃうかもね。彼の友達が店で言っていたことを思い出し、やけくそのような気持ちになる。私は歩いて彼との距離を縮め、隣に座った。

「飲むだろ?ビール、冷やしといたんだぜー」

 そう言ってシュガーは、水際の砂の中に埋めていたビール瓶を掘り起こした。・・・まさか、海の水で冷やしていたとは!

「・・・ワイルドだ」

 私はそう感想を言って、ビールを受け取る。キンキンとはいかないまでも、それはちゃんと冷やされていた。

 自転車でも飲酒運転だよね・・・。そんなこともちらっと頭をよぎったけれど、とにかく喉が渇いていた。だから私は彼を待たずに蓋を歯で開けて一人で飲みだす。炭酸が喉にしみて、一瞬涙が出るかと思った。

「どうだ、美味いか?」


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