風変わりなシュガー
だけどどんどん漏れでてしまって、その内どうでもいいやって思いだした。だって私、こんな風に泣くのなんてかなり久しぶりだもの。声を出して鼻水も出して泣くなんて、それも外で泣くなんて、今までは避けてきたことなのだもの。
でもやりたい。ここで、泣きたい。だから――――――・・・
ぐわっとお腹の中から熱い塊のようなものが湧き上がってくるのを感じた。もう止められない、そう思った。
わんわん泣き出す。
足首まで海に浸かった状態で、誰も見えない海にむかって。
叫ぶみたいに泣きじゃくった。
頭が真っ白になって、目の前に広がる海や空の色が変わりつつあることにも気がつかなかった。
シュガーはしばらく泳いで、私の泣き声がおさまったくらいで海から上がってきた。バシャバシャと波音を立てながらこちらへ向かって歩いてくる。濡れたTシャツを頭から脱いで、両手できつく絞っていた。
ゆっくりと水平線に向かって降りつつある太陽を背中に背負っていて、私からはその表情まではよく見えなかった。
「今、あんたを抱いたらさ」
シュガーは濡れて雫を垂らした顎をつんと上げ、私を見下ろすと言った。
「しょっぱいのかな、それともやっぱり甘いのかな」
午後の太陽が燦燦と降ってくる。濡れた頬にはりつく鬱陶しい髪を手で払いのけて、私は鼻声で呟いた。
「・・・うるさい、馬鹿ヤロー・・・」
波打ち際で膝を抱えて座り、シュガーと私は唇が触れ合うだけのキスをした。
シュガーとのキスは、別に甘くはなかった。
だけどそれは、綺麗に私の涙を止めた。