風変わりなシュガー
それが5月のことで、今はもうすぐ8月。私は夏の足音が近づいてきている頃から、お世話になっている市川さんの店が休みの日にはアチコチを歩き回り、山や周辺の小さな町をウロウロしていた。
そして今日、初めてこの浜辺にきたのだ。市川さんの店から一番近いバス停からガラガラのバスに乗って、10ほどの停留所を過ぎたあとで。
水着とタオルと浮き輪だけ。それは鞄に突っ込んであったから、そのまま砂浜へと降りてきたのだ。
そして今、広大な海原の端っこで、こうして太陽に焼かれている。
肌は順調に、真っ赤になっていった。
「うーん、メグちゃんてさ、実は馬鹿でしょ」
市川さんはそういって、大きな腕を体の前で組んだ。
私はがるるとうなり声を上げてから、横たわったソファーの上から抗議する。
「ひどーい!酷いです~!苦しんでる少女に、何てことを!」
「だって判ってたでしょ、こうなるの?」
見事に真っ赤に日焼けした私の肩を、そう言って市川さんはペシリと叩いた。
「ぎゃー!!」
「こーんだけ焼けてりゃそりゃあ地獄だよなあ。こりゃ風呂はやめたほうがいいよ、死ぬからマジで」
「うううっ!痛い~!ご、ご、拷問ですよ!叩くとか何ですか!!」
涙ながらに私が苦情を申し立てると、にやりと笑った市川さんがもう一度肩を叩く。
「ぎゃー!!」
「やっぱり馬鹿でしょ」
「鬼!鬼でしょ市川さん~!!」