風変わりなシュガー
「シュガーには言わないでくれますか、私がいなくなる日は」
市川さんはどうして?という風に少し首を傾げたけれど、その内に頷いた。
「わかった」
「ありがとうございます」
パンケーキはしっとりと甘く、柔らかかった。
今ではシュガーは、週に2日は喫茶店「ライター」へと来るようになっている。わざわざ、車で20分以上かけて。
そんなわけで、今日も眠そうな顔をしたシュガーが、カウンターでダラダラと寝そべっていた。
漁が早いのに昨日は夜まで起きてしまったらしい。それをブツブツ言うのだ。カウンターでだらしなく寝そべりつつ。
「仕方ないでしょう、自分が早く寝なかったんだから。そんなに眠いならここに来ずに家で寝たらいいのに!」
私はピッチャーから水を注ぎながらそういう。シュガーは口をへの字にまげたままで顔を上げた。
「だって文句たらふく言われまくってたんだぜ、寝れるかよそんなところで」
「ん?文句って、お母さんか誰かにってこと?」
違う違う、とシュガーは手を振る。
「前一緒にいた女の子ー。やたら不機嫌なんだよ。オレのことを独り占めしたくなったんだってさ、まあ判るけどな、オレは魅力的~!だし」
・・・どこから出るのだその自信は。私は心の中でそう突っ込んだけど、表面的には肩をすくめるだけにしておいた。
以前来たシュガーの友達もあのあと数回店に食べに来てくれたけれど、その彼が言っていた。一緒にいたシュガーが電話がかかってきたって言って、携帯を持って店を出たあとに。