風変わりなシュガー


「泣き喚くから眠れなくてさ・・・参った~・・・今日はちょっと時化ててえらく船が揺れたんだ。なのに寝不足とか、げーろげろだ」

「あっそう。それを日本語で自業自得というんじゃないの?」

「何でだよ。オレはお前だけだー!なんて女の子にはいわねーぞ。将来の約束だって絶対にしない。だってそんなつもりはハナからねーもん。どーして楽しむだけって出来ないんだろうなあ~・・・。なあ、何で?」

「私に聞かないでよ。私はそんな付き合いしたことないもん」

「堅物のメグ」

「うっさいわね、チャラ男!まあだから、とにかく家に帰って寝れば?女の子のところではなくて、自分の家に。・・・あるんだよね?自分の家?」

 まさかないとか?もしかしたらそれも有り得るかも、と思って恐る恐る聞いたことだけど、シュガーがむくれ顔であるに決まってるだろ!って言ったからホッとした。

「あるのか、家。良かった良かった。ご両親や兄弟はいるの?」

「おー、親父と姉貴がいるよ。お前オレのことを何だと思ってるわけ?」

「軽くて不誠実で軟派な漁師」

「ま、それは間違ってない」

 でしょ?私は皿拭きを追えて、布巾をハンガーに干した。

 またぐで~っとカウンターに突っ伏したシュガーが、そういえばとダルそうに顔を上げる。

「メグって夏の間のヘルプって言ってなかった?それっていつまでのこと?」

 私はちょっと笑う。覚えてたのか、と思って。それは嬉しいような残念なような、複雑な気持ちだった。どういう顔をしたらいいのか判らないままで、首を振る。



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