風変わりなシュガー


「・・・教えない」

 うぐぐぐ、とシュガーが唸る。

「お前は本当に思い通りにいかない女だよっ!感じ悪いぞ~感じ悪ぃ~!」

「あははは」

「笑ってんじゃねーよ、くそ」

 店には他に、デッキのテーブルに車で旅行中のカップルがいるだけだった。彼らはずっと笑顔で何かを楽しそうに話している。その軽やかな笑い声が時折店の中へも流れてきて、カウンターで一人でだらけているシュガーとは対照的な明るさだった。

 市川さんは今日は調子があまり良くないらしく、ちょっと休憩してくるね、と言ってしばらく前から2階へ上がっている。

 私は扇風機の風を受けながら、ぼんやりと車が行き交う国道の方を見ていた。

 一番暑いときでも陽炎も出なかった。

 ここにいた夏は、私が今まで過ごしてきた夏とは全然違っていた。

 まるで別の国に来たみたいに―――――――――・・・

「なーあ、メグってば」

 シュガーの声が聞こえてハッとした。

 彼を見ると、相変わらずだらけた格好のままで、上目遣いにこっちを見ている。

「何ですか」

「抱かせてよー、一回くらい。いいだろ、もうすぐ居なくなるならさ、最後に~」

 ガックリ。

 私は力がぬけて、両腕で上半身を支える。・・・この男、ほんと、あくまでもそんなのなのね。


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