あの日の桜はⅡ【大幅修正中】
髪を一束掬えばまだ乾ききっていない黒髪がさらさらと落ちる。
「あっれぇ?葵クン何してんの?」
不意に入口の方から嬉々とした声が聞こえた。
「別に?女の子の髪に触れてることがそんなにいけないこと?」
振り向けば、入口の壁に背を預けた千景がにやにやとした表情をしてみていた。
どこからわいて出てくるか見当もつかない。
「べっつにぃ、王子様が姫に近づこうがそうでなかろうが俺には関係ないしねぇ」
ずいぶんと皮肉めいた言葉だ。
王子様と呼ばれるのを嫌っているのを知っていてあえて使ってくるのだから。
俺は一旦莉子ちゃんから離れ、ソファに座りなおした。