トリトマ




「おい、紗緒!」

「…なに?」


バンッとわたしの机を叩いた周介の顔はすごく不細工だった。昨日わたしがグーパンチをした左頬が真っ赤にはれている。わお、アンパンマンみたい。


「…なに?じゃ、ねーよ!見ろこの左頬!アンパンマンみてぇに腫れちまっただろ!どうしてくれんだ!」

「いいじゃん、ちびっこに大人気。」

「ワーイ、やったぁ〜!…じゃねーだろ!」


ひとりで漫才をしている周介にあきれてわたしは席をたった。購買のジュースでもかってこよう…。このままこいつを見てるとイライラする。


「あっ…てめ!逃がさん!」

「うわっ、もう、付いてこないでよ!」

「お前なぁ、昨日いきなり殴っといてなんだその態度!」


それはお前がわたしの気持ちにまったく気づいてない上に、拒否権さえも与えてくれなかったからだろが!

なんて、言えたらどんなに楽だろう。
1日よく考えた。昨日のはもしかしたら神様がくれた手助けだったのかもしれない。

きっとあそこで、周介にわたしの思いをつたえていたら、今こうして馬鹿をやっているなんて、なかったんだろう。
そう思うと、告白しなくてよかった、と思う自分がいる。






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