この思い秘密です
だけど坂下さんも負けちゃいない。

「沖野君そんなこと言って大丈夫なの?」

「はい?」

淳平が怪訝そうに坂下さんを見ると

「このまま曲がヒットしないと歌手活動もヤバいんじゃないの?」

あちゃ~~それ言っちゃダメだよ!とは言えずうなだれるしかない私の横で

淳平が握りこぶしをぎゅーっと強くにぎっているのが視界の隅で見えて

胸が苦しくなる。

だけど淳平は坂下さんの提案を受け入れようとする気配はなかった。

そんな淳平に坂下さんは

「そうやって拒絶するのもいいけどさ、沖野君って凪ちゃんの歌聞いたことある?」

「・・・ないですが」

完全にふて腐れモードだ。

「だったら頭ごなしに拒絶する前に凪ちゃんの歌を聞いてから判断してみたら?
それでも嫌だというのならこの話はなかったことにするよ・・・・
凪ちゃん一人をプロデュースするけどね」

お前が断っても痛くも痒くもないとでも言いたげな含み笑いをする坂下さんが

怖いと思った。

だけど今私の歌を聞いてから判断してって言ったよね。

とんでもない!なんで私がここで歌わなきゃいけないのよ。

目を丸くして首を横に振るが私を取り囲むように座っている3人の男たちに視線が

私に集中する。

その目は早く歌えよと言っているようで、この状況で歌えますか?!だ

だけど現実はそう甘くない。

坂下さんの「凪ちゃん」て私の名を呼ぶ声は優しいものの目がいい加減にしろと言わんばかりに鋭く

素直に歌うしかないと諦めた。
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