この思い秘密です
それは淳平の声ではなかった。でもそうじゃなかったら・・・今の拍手は誰?

もしかしてここで歌っちゃいけなくて拍手も嫌味だったとか?

そう思ったと同時に私はくるりと回れ右をし腰を90度に曲げた。

「申し訳ございません」

とにかく理由はなんであれ謝るしかないと思い私は相手が何か言うまで腰を上げなかった。

こんなことは仕事柄よくあることだし苦ではないのだが・・・

「ちょ・・ちょっと・・顔上げて。僕怒っているわけじゃないんだよ」

「はい?」

腰を曲げたまま顔だけを上げると私の目の前にいたのはなんと

音楽プロデューサー坂下滋(さかしたしげる)だった。

「あっ・・あっ」

声にならない声を上げる私に坂下さんは少々困惑していたが

困惑するのは私の方で

坂下滋と言えばプロデュースする曲は全てチャートの上位を占めており

彼にプロデュースしてもらいたいアーティストは数知れず。

だけど坂下滋という男はどんなに有名なアーティストでも

これだと思う人以外は絶対プロデュースしない事で有名だった。

そんな凄い人が今私の目の前にいることは奇跡に近いし

まさか私のド下手くそな歌を聞いていたかと思っただけで

顔から火が出そうなほど真っ赤になり恐ろしくて腰を上げれなかった。


だが、坂下さんは頼むからそんなお辞儀はしないでくれと懇願するので

私も仕方なく腰を上げ、とりあえずは自己紹介だ。

「プロダクションCPの芹沢凪と申します」

「・・・せりざわ・・・なぎちゃんね~~デビューしてどのくらい?」

「はい?」

今デビューって聞こえたような・・・・
< 4 / 80 >

この作品をシェア

pagetop