この思い秘密です
「それは出来ません」

私は坂下さんにきっぱりとお断りした。

だって私のやりたいことは歌じゃない。

淳平をもう一度表舞台に立たせること。

そうじゃなくても今淳平は契約を解除されてもおかしくない状態だ。

そんなことは絶対やだ。

だって私がこの世界に入るきっかけだって淳平だったんだもん。


「・・・・わかったよ」

ほっ・・・諦めてくれるんだと思ったのだが・・・

************************

　
「それ・・本気で言ってるんですか？」　

「嘘を言ってどうする？僕は至って真面目だよ？でも悪くない話だと思うよ」

「ですが・・・淳平がなんと言うか・・・それ以前に無謀です」


坂下さんは淳平をプロデュースしてもいいというのだ。

だがそれには条件があった。

それは私とユニットを組んでデビューさせるということだった。

坂下さんのプロデュースとなればヒットは言うまでもない。

だけど私は歌を学んだことも人前で歌ったことすらない。

そんな私と淳平が組むだなんて、私が仮にOKしたとしても

淳平が首を縦に振るとは思えない。それどころかそんな提案無謀すぎる。


「無謀なんかじゃないよ。それよりも凪ちゃんは自分の歌唱力をわからなさすぎだよ」

「そんなことは・・・・」

だがもし私が断ったら間違いなく淳平の解雇への道は近づいてしまうわけで・・
・
坂下さんは時計をみるとハッとしながらも

私の名刺が欲しいといった。

出さないわけにも行かず名刺を渡すと

「とりあえず考えておいて。・・といっても僕は必ず君をデビューさせるけどね。
改めて事務所に話を持って行くからよろしくね～～」

坂下さんは手をヒラヒラさせながら屋上を出た。

取り残された私はほとんど固まったまましばらくその場を離れることができなかった。

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