この思い秘密です
「凪ちゃんお疲れ。休憩しよう~」

かなり多くの注文を出してきた坂下さんだがOKが出た途端いつものチャラさに戻っていた。

だがいつまで引きずってるのかよくわからないけど

ムスっとした表情を変えようとしない淳平は

私を避けるように入れ違いでブースに入っていった。

コントロールルームのソファーに座ると坂下さんは今さっきOK

を出した曲を聴かせてくれてた。

自分の声がいいなんて思ったことなどないし

「これが私の声?」というのが正直な気持ちだった。

だけど坂下さんは私の歌を聞きながら体でリズムを取っている。

その表情はとても満足気で

大変だったけど頑張った甲斐があると思えた。

それと同時に淳平は満足してくれているのかと不安な気持ちにもなった。

「初めてのレコーディングはどう?」

「・・・想像以上に大変ですね」

本心だった。

「レコーディングの仕方っていろいろあってね。今みたいに最後まで頑張って
歌ったものをそのまま使ったり、直したい部分があればその部分だけを新たに
録音して直したい部分を切り取って音を貼り付けるっていうのも
あるし・・・あとは・・・歌が上手じゃない子達でも歌手になってる子たちいるよね~~
ああいうのは・・・ま~全て張り合わせだね。
今はPCがあれば何とでもなるんだよ。だけど僕はそういうのが嫌いなんだ。
ちゃんと最初から最後まで歌いきったものを使いたい。だから・・・
僕がプロデュースする子達はみんな歌唱力はずば抜けてる」

淳平のレコーディングも今回の様な感じだ。

でもそれが普通だと思ってたから坂下さんの話にはかなり驚いた。
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