虹色のラブレター
「ここって入っちゃダメだったの?」
『みたいだね、知らなかったんだ』
千鶴はクスッと笑って「ほんとだったんだ」と独り言のように言った。
途中から警備員の声が聞こえなくなり、僕たちは無事に(?)車に辿り着いた。
急いで車に乗り込み、すぐにエンジンを掛けた。
僕たちは息を切らしたまま目を合わせた。
『ビックリした?』
「うん、ビックリした」
『でも千鶴座ったままだったよ?』
「私がビックリしたのはそれじゃないよ?」
『え?何?』
「私の腕を離さない智の手だよ」
一瞬、時間が止まったかのように僕たちは見つめ合った。
にらめっこのように。
「あははははっ」
負けたのは千鶴だった。
その笑い声が合図かのように、僕たちはお互いにそんな自分たちの行動が可笑しくて笑った。
しばらくして車が動き出した時、道はライトを点けなくてもいいくらい明るくなっていた。