虹色のラブレター
別の日に美貴はこうも言っていた。
「今までは自分のことあんまり好きじゃなかったの」
『俺もそうだな……あんまり好きになれない』
「でも、今は結構好きだよ」
『今は?』
「うん、恋をしている自分は好きかな。毎日が輝いてるような感じがして……頑張ってるんだって思えるの」
彼女をそんな風に変えてしまったのはきっとこの僕だ。
なのに、僕は彼女のそんな言葉を聞く度に、もう二度と会うこともないかも知れない人のことを考えてしまう。
そんな自分が不誠実なのはわかっていた。
それはずっと前からわかっていた。
駄目だということもわかっていた。
でも、僕はそんな美貴と会わずには過ごせなかった。
僕は心の穴を埋めてくれる彼女と会わずに過ごせなかったのだ。
僕には勇気がなかった。
傷つけることも、自分が傷つくことも怖かった。
だからただ……彼女の優しさに甘えていた。
僕の気持ちは彼女にはないのに……。
タイミングが悪かった。
もっと違うところで会ってたら……僕はきっと彼女のことを愛していたと思う。
そんな卑怯な言い訳を考えてしまう自分にすごく腹が立った。
本当はそんなことが理由じゃないことはわかっているのに……。
つまり、僕はやっぱり人を傷つけるのも、自分が傷つくのも怖いだけだった。