虹色のラブレター
僕はそんな彼女にかけてあげるいい言葉を探していた。
その空白が気まずさになり、二人の間に沈黙が降りてきた。
「そんなことないよ」って言ってあげたかった。
その言葉を口にするのは簡単なことだった。
でも、口には出せなかった。
出してはいけないと思った。
半端な気持ちでこれ以上、美貴を傷つけてはいけないと思った。
しばらくして、彼女の言葉で沈黙は破られた。
「それと、もう一つ謝りたいことがあるの」
僕は何も言わずに彼女の次の言葉を待った。
「私……気付いてたんだ」
『え?』
「智が……」
『俺が?』
「智が……」
そこまで言いかけて、美貴はその先の言葉を口にすることを躊躇っていた。
『言いたくないなら言わなくても……』
「ううん、最後まで言わせて」
僕の言葉をさえぎる様に彼女は言った。
おそらくここから先が、彼女が今日僕に「話がある」と、そう言った言葉の続きなのだろう。
彼女は一度短く息を吐いた。
「千鶴のことが……好きだってこと」
僕の胸の奥は何かが爆発したような強い衝撃を受けた。
千鶴への思いは、他の誰にも気付かれない様な場所にそっと仕舞ってあったはずだった。
片思い……叶わない恋だからこそ、なおさら誰にも気付かれないようにしてきた。
でも、美貴は知っていた。
しかも、彼女は確信を持ってそう言い切ったのだ。