虹色のラブレター
「智(さとし)だよね?」
もう一度受話器からその声が聞こえた。
僕はしばらく声を出すことが出来なかった。
「もしもし?……智?」
『うん、そうだよ』
「よかったぁ……もし違うかったらどうしようかと思ったじゃん」
『……千鶴?』
「うん……」
僕の心臓は飛び出しそうな勢いで熱く速く鼓動を打った。
『久しぶり……』
「ほんと、久しぶりだね」
『どうして急に……』
「田舎に帰ってたの。目標が出来たから……高校卒業するために」
千鶴は何事もなかったかのように、いつもの千鶴らしく話してきた。
それが逆に僕を安心させてくれた。
『それはいいけど……どうして連絡くれなかったんだよ』
「ごめんごめん……い、色々あってさ。智は?元気だった?」
『俺は……』
一瞬言葉に詰まり、その続きの言葉に迷ったが僕は何もなかったように答えた。
『別に何もなかったよ。千鶴は?色々あったって?』
「うん、私さ……またこっちで住むことになったの」
その言葉を聞いた瞬間、僕は喜びに胸を弾ませた。
でもそのことを隠すように僕は平然を装って返した。
『こっちで!?』
「うん、今度は寮なんだけどね」