虹色のラブレター
いつもと同じように電話で話をしていた時、千鶴が言いだした。
「またオールとかしたいね」
『オール?』
「うん、去年の夏したじゃん」
『うん……したね。またあの港に行きたいの?』
僕の胸に何とも言えない不安が込み上げてきた。
僕にとってあの日のオールは大切な思い出だ。
でも何も言わずに離れていった、あの時の千鶴の後姿も僕は一生忘れられない……。
「ううん、別にどこでもいいよ。ただ……」
『ただ?』
「ただ……この家でずっと一人なのが寂しくて」
『そっか。一軒家だよね?』
「うん……だけど古くてボロボロだし。本当は二人で住むことになってるから、広くてそれが余計に寂しいの」
『なるほどね……いいよ。じゃ、俺が仕事の休みの前の日でいい?』
「うん、いつ?」
『あさって休みだから明日にする?』
「うん!!そうする!!」
彼女は嬉しそうに大きな声で言った。
でも僕の喜びはきっとそんな彼女よりも上回っていた。