虹色のラブレター
千鶴は、Tシャツにスウェットズボン、サンダルという姿で、赤いママチャリに乗って来た。
髪は一つにくくってあった。
約1年振りに会った彼女は、髪が伸びただけではなく、以前よりもずいぶん大人っぽく見えた。
僕の緊張は最高点に達していた。
「智……久しぶり♪」
千鶴が笑顔で言った。
『う、うん。久しぶり。早かったね』
「うん、すぐ近くなんだ」
千鶴は自転車にまたがったまま、向きを変えた。
『そ、そうなんだ』
僕が何もせずに立っていると、彼女は「乗っていいよ」と言った。
僕は冗談半分で、荷台に座った。
すると、千鶴は本当にペダルを漕ぎ始めた。
『え?大丈夫?俺が漕ぐよ?』
「ううん。大丈夫」
駅から千鶴の寮の方への道は緩い下り坂になっていたので、彼女はそれを利用して、僕を乗せたまま自転車を走らせた。