虹色のラブレター
千鶴が寮として住んでいる一軒家は、彼女の言うとおり、一昔前の古びた木造の物件だった。
玄関はドアではなく引き戸で、中に入ると、木と土壁の独特の匂いがした。
『お邪魔します』
「どうぞ。ってゆうか誰も居ないよ」
僕の緊張をよそに、彼女は笑いながら言った。
入ってすぐ左に狭い台所があった。
そこを硝子戸で隔て、隣に和室の6畳部屋がある。
その奥に同じような和室がもう1部屋あった。
千鶴は奥の部屋ではなく、台所に近い方の部屋を使っているようだった。
洗面台とお風呂場は、台所の横に付けられた扉の向こうにあるようだったから、こっちの部屋を使うのは当然だ。
部屋には、小さなテレビと、その横にオーディオラックとミニコンポ。
小さなテーブル。電話。
それ以外は、まだ開けられていない引越しの段ボールと、開けっぱなしの段ボールが部屋の隅に放置されているだけだった。
衣服や布団は、奥の部屋に置いてあった。