虹色のラブレター
僕が突っ立ったままで居ると、千鶴はテレビをつけて、「何にもないけど座ってて?」と言って、クッションを置いてくれた。
とりあえずテーブルの前に座った。
千鶴は台所の方に行った。
僕は、テーブルの上に置いてあった雑誌を意味もなく開いた。
テレビでは、何度か見たことのあるクイズ番組をやっていた。
「さっきまで、晩ご飯作ってたの。食べる?」
台所から千鶴の声が聞こえて、シチューのいい匂いが流れてきた。
『あ、うん。頂きます』
「どうして敬語なの?可笑しい」
僕はずっと緊張していた。
女の子の部屋に入ったのも初めてのことだったし、それに、ここは千鶴の家なのだ。
緊張しないわけがない。
『いつも自分で作ってるの?』
「ううん。今日は特別。智が来るってわかってたからね」
『料理とかできるんだ?』
「出来るよ!!実家ではよく作ってたから。唯一の特技かも」
そう言って千鶴は笑った。
そして僕は、また一つ千鶴のいいところを発見して胸を弾ませるのだった。