虹色のラブレター
それと同時に、僕は車から降りた。
『おつかれ~!!』
僕の姿を見つけた彼女は、右手を振って満面の笑みを見せた。
彼女のそんな笑顔をみたのは初めてだった。
もちろんエプロンを外した姿を見たのも初めてだった。
気付いたら、僕も彼女に右手を振っていた。
そのやりとりは、周りから見れば恋人同士のように見えただろう。
「本当に来てたんだ」
助手席に乗ってすぐ彼女は嬉しそうにそう言った。
『約束したじゃん』
「したけど……疑ってた」
『どうして?』
「う~ん……なんとなく?」
美貴は笑った。
『失礼な人だな』
僕がそう言うと彼女は少し俯いて遠慮するように小さな声を出した。
「名前……」
僕は車を動かし始めていた。
『え?なんて?』
「だから……名前」
今度はさっきよりも少し大きな声だった。
僕はああ、と言って続けた。
『智(さとし)……なんだけど、智(とも)って漢字だから友達には智(とも)って呼ばれてるんだ。あだ名?みたいなもので』
僕は笑いながら言った。