虹色のラブレター
すると、千鶴は引き出しから勢いよく赤い手帳を取り出して、ペンを持ち、そこに何やら文字を書き始めた。
僕は彼女と初めてオールをした日のことを思い出した。
千鶴はあの日も、その赤い手帳に何やら文字を書き込んでいた。
『あの日も何か書いてたよね?』
千鶴は手を止めずに答えた。
「うん。オールした日でしょ……」
『そう。いつも何を書いてるの?』
彼女はチラッと僕の方を見てから、またすぐに続きを書き始めた。
「教えな~い。でも、そんな大したこと書いてないから」
そう言う彼女の目は真剣だった。
『見せて?』
「やだ」
『いいじゃん』
「駄目」
『どうして?』
「だって恥ずかしいもん。絶対、見ちゃ駄目だよ?」
そうやって僕に念を押してから、千鶴は手帳をさっさと元の引き出しに仕舞った。