虹色のラブレター
* 11 *
次の日の朝、僕が目を覚ました時、千鶴の姿はこの家のどこにもなかった。
彼女が寝ていたはずの隣の和室には、布団が綺麗にたたんで重ねられていた。
壁に吊られてある時計を見ると、時間は10時を過ぎたところだった。
僕は重い体を起こして、布団の上であぐらをかいた。
無意識にテーブルに目をやると、そこにはラップにかけられたトーストとハムエッグ、そして、一枚のメモ紙が置かれていた。
「智、おはよう。
学校があるから行って来るね。
起こさなくてもよかった?
気持ち良さそうに眠ってたから…ごめんね。
一応、朝ごはん作っておいたから食べて下さい。
部屋は自由に使ってくれたらいいけど、もし出掛けたり、家に帰ったりするなら鍵かけていってね。
千鶴
p.s. 昨日は本当にありがとう。
また…来てくれたら嬉しいです。」
メモ紙の隣には、部屋の合鍵が置かれてあった。
僕はその合鍵を強く握り締めて、小さくガッツポーズをした。