虹色のラブレター
その次の週の、僕の仕事が休みの日にも、千鶴は学校を休んだ。
そして、今度は動物園に行こうと彼女は言いだした。
二人で弁当を作って、地元にある動物園に出掛けた。
ウィークデーの動物園はかなり寂しかった。
だけど、千鶴は動物園に来たのも、小学校の遠足以来で2回目だったらしく、水族館の時に負けないくらいはしゃいでいた。
お昼は綺麗な芝生の広場を見つけて、そこにレジャーシートを広げて弁当を食べた。
タコさんウインナーが、イカさんウインナーみたいになってて笑った。
二人以外、他に誰も居なかったので、大の字になって寝転んで、空をゆっくりと流れる雲を見上げた。
「見て?あの雲、亀に見えない?」と千鶴が言った。
そういえば、子供の頃は雲がいろんなものに見えた。
いつからそんな風に見えなくなったのだろう。
というよりも、いつから空を見上げなくなったのだろう。
「あれはウサギさんに見える」
まるで、時間が流れていないかのように静かだった。
そして、「人は動物だよね」と千鶴が言ったので、「うん。ヒト化のヒトだ」と言うと、彼女は「どうする?飼育係さんに捕まったら?」と言って笑ったから、僕はちょっと真剣に「じゃ、死ぬまで一緒だ」と言ったら、彼女は少し遅れて乾いた声で笑った。
千鶴の、その微妙な反応が気になって少し考えてみた。
そして、「ああ、そうか、死ぬまで一緒に居れる確率は二分の一なんだな」ということに気付いた。