虹色のラブレター
それから世間はゴールデンウィークに入った。
僕は仕事の休みがなかったので、そのまた次の週に、今度は二人で映画を観に行った。
泣ける恋愛映画と泣ける青春映画で迷ったが、結局、二人が観たのは笑えるコメディだった。
パンフレットを買って映画館を出た後、隣接するショッピングモール街で買い物をした。
雑貨屋の店員さんに恋人だと勘違いされて、勧められたペアのチョーカーを買った。
千鶴はどう思っていたのかわからないけど、僕は飛び上るほど嬉しかった。
夜は、千鶴の家でゆっくりと過ごした。
二人のこの奇妙な同棲生活に、一つのサイクルが自然と生まれてきた。
僕たちは、そんな穏やかで安らぎに満ちた日々に、たくさんの思い出を重ねていった。
この頃の二人は、今日も明日もここに居ることが当たり前で、そして、それだけが全てで永遠だと感じていた。
”出会いには必ず別れがある”
いつか誰かが言ってた言葉は、記憶の底に置き去りにされ、僕の胸の中は、ただ目の前にある幸福の日々に満たされていた。
その裏にあったはずの真実は、いつかその輪郭さえも失って、未来への希望の光が作る陰の中に、その姿を潜めていった。
そして、その過ちに僕が気付くのは、もっと先のことだった。