虹色のラブレター
その二日後に事件は起きた。
もっとも、事件だったと僕が知ったのは、もっと後のことだけれど。
その日の僕は遅番シフトで、20時まで仕事だった。
職場から直接千鶴の家に帰った時、いつもなら先に帰ってるはずの千鶴の姿がどこにもなかった。
それどころか、一度でも家に帰ってきたような気配はない。
家の中は蒸し暑く、部屋を見渡しても、そこは、朝、僕が家を出た時の状態のまま何も変わっていなかった。
あれ?と疑問を抱いた瞬間、僕の胸は、一気に不安の波に飲み込まれた。
もしかして……!!
次の瞬間、僕が駆け出そうとした時、千鶴の家の電話の音が、静かな部屋に鳴り響いた。
僕は靴も脱がずに部屋に駆け上がり、受話器を掴んだ。
『も、もしもし!?』
しばらく受話器の向こうから声は聞こえてこなかった。
プァ~ンという車のクラクションだけが、その後ろから聞こえた。
だけど、受話器の向こうの相手が千鶴だということを、この時、僕は確信していた。
根拠はない。
ただ、自信だけがそこにあった。
あえて、説明しろと言うならば……それが僕と千鶴を繋いでるものだから。ということだと思う。