虹色のラブレター
千鶴はリモコンでテレビを消した。
部屋には有線から流れる音楽だけが小さく聞こえた。
ラブホテル独特の空気に部屋は包まれた。
少しして、千鶴が言った。
「智、何考えてる?」
『え?う~ん……なんか不思議だなって』
「不思議?」
『今、こうやって一緒のベッドに入ってるのが……』
「そう?」
『うん。信じられない』
「……奇跡かも」
『奇跡は嫌だよ』
「どうして?」
『だって……これが奇跡だったら、もう二度とないってことじゃん』
少し考えて、千鶴が言った。
「じゃ……また来る?」
千鶴のその言葉はすごく嬉しかったけど、僕は冷静に聞き返した。
『いいの?そんな約束して』
千鶴は囁くように言った。
「うん、約束……させて?」
『うん……もちろん』
千鶴はちょっと恥ずかしそうに笑った。
それから彼女はパッと表情を変えて、真剣な眼差しで僕を見つめながら、かすれた声で言った。
「智?……私ね……」