虹色のラブレター
僕には千鶴の涙の理由がわかる。
それはつまり、僕が美貴の気持ちに対して流した涙と同じなのだ。と思う。
「本当に……キスだけ?」
『うん』
「……しないの?」
『しないよ。だって……』
「だって?」
『だって……俺は千鶴の恋人じゃないだろ?』
少しの空白を置いて、千鶴は頷いた。
「うん……そうだね」
”俺の一方的な「好き」だけでするもんじゃない”この時、僕はその言葉を飲み込んだ。
千鶴がその小さな胸いっぱいに抱えていた、本当はとてもじゃないけど抱えきれないほどの大きな気持ちをこれっぽっちも知らないまま……。