虹色のラブレター
僕は自分の家には帰らず、そのまま職場に向かった。
そして、昼休憩の時、いつも通り喫茶店に行った僕は、注文を聞きに来た美貴に声をかけた。
『あ、あのさ、美貴さん……』
僕たちはずっとここで顔を合わせてたけど、もう前みたいに話をすることはほとんどなくなっていたし、まして僕から美貴に話しかけることはなかった。
僕の言葉に驚いた美貴は、目を丸くして首を傾げた。
『話があるんだ……』
「は、話?今?」
『ううん。今晩……時間ある?』
「友達と約束があるから……その後でもいい?」
『うん、いいよ。じゃ……時間出来たらベル鳴らしてくれる?』
「うん、わかった。なるべく早くいけるようにするから」
彼女は何かを察したのか、少し強ばった笑顔を僕に見せた。
『ごめんね、急に』
「ううん、いいの。気にしないで……智は今日がいいんでしょ?」
美貴の優しさが身に沁みる。
こんなにいい人で、こんなに僕のことを思ってくれてるのに……と思う。
僕は彼女と目を合わせ頷いた。
『ありがとう、美貴さん』
すると、彼女は「あはは」と声を出して笑った。
美貴のそんな笑い声を聞いたのは久しぶりだった。