虹色のラブレター
電話で聞いた場所は、僕の職場と美貴の家のちょうど真ん中くらいにある居酒屋だった。
11時を過ぎた国道は車の数も少なくて、思ってた以上に早く着きそうだった。
途中で国道から逸れて、僕は暗い路地に入った。
それはいわゆる”抜け道”というもので、その居酒屋に行くなら国道を走り続けるよりも間違いなく近道になる。
何度か小さな交差点を曲って、最後の直線を抜けると居酒屋に着くというところで、ポケットに入れていたベルのバイブが震えだした。
僕は運転しながらベルを取り出し、そこに表示された番号を見た。
それは、千鶴の家の電話番号だった。
他の誰かならともかく、千鶴が僕にベルを鳴らしてきた。
しかも、時間はもう11時半を回っている。
ああだこうだ考えるよりも、まっ先に嫌な予感が胸の中を支配して、僕は迷わず車を停めた。
少し逆戻りすることになるが、確かここまで来る途中で公衆電話があったのを思い出した僕は、急いで車をUターンさせた。