虹色のラブレター
* 14 *
電話で場所を聞いた居酒屋は、片側3車線の大きな幹線道路沿いにあって、上には高速道路が走っていた。
そこから10メートルくらい離れた道路沿いに、車が3台縦に並んでハザードを出して停まっていた。
僕が居酒屋の前に車を停めると、3台のうち、一番後ろに停まっていた車の助手席側のドアが開いて、そこから人が降りてくるのが見えた。
薄暗い幹線道路だったけど、僕はそのシルエットを見て、それが美貴だとすぐにわかった。
泥酔いは本当だったらしく、彼女はフラフラと僕の車の方に近づいてきた。
僕がドアを開けて外に出ようとした時、美貴が乗っていた車の運転席側のドアも開いて、そこから背の高い細身の男の人が降りてきて、フラフラの美貴の腕を掴んだ。
僕も車から降りて、そんな二人に近づいていった。
美貴は俯いて、その長い黒髪で顔を隠していた。
彼女のことを支えながら、明らかに僕より年上らしいその男の人は困ったような顔をして言った。
「あんたが智君?」
電話で聞いた声と同じだと思った。
僕が頷くと、彼は続けて言った。
「俺、美貴ちゃんの飲み仲間……勘違いしないでくれよ?俺はただの友達だから」
『は、はい、わかってます……』
「それで、あんたの電話番号渡されて”呼んで”って言われて電話しただけだから」
『そ、そうだったんですか……』
「何があったのか知らないけど……こんなに酔った美貴ちゃんを見るのは初めてだからさ……」
僕はそう話す男の人の横で、ぐったりとして立っているのがやっとのような美貴の姿から目が離せなかった。
「だから……よろしく頼むよ」
僕はそんな彼から美貴を預かって、彼女の腕を肩に回した。
アルコールの匂いがプンプンした。