虹色のラブレター
僕は彼女から目を逸らして、車の窓を全開にした。
”智の車に乗ると窓を全開にしたくなるの”
千鶴の声が聞こえたような気がした。
それは、公園のどこからか聞こえてくる小鳥のチュンチュンという鳴き声に混じって僕の心に聞こえた。
全開にした窓から空を見上げると、真っ暗だった夜空は蒼く深く色を付け始めていて、モノクロだった辺りの景色に色を付け始めていた。
それは、これから始まる新しい一日への穏やかで静かな演出に思えた。
『あんなに素敵なキスはできなかった』
僕は心の中で、そう呟いた。
それに……あの時、僕は確かに感じていた。
――”愛”がそうやって生まれるのかどうかはわからない。
だけど僕があの時、心で感じていたものが”愛”だということを信じたかった。
二人の間に”愛”は生まれていたのだということを……。
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